いよいよNHK大河ドラマ『青天を衝け』が始まりました。私こと坂本慎一は、渋沢栄一研究に携わって、四半世紀以上なので、ドラマの開始は感無量です。
NHK公式ガイドブックではすでに16話まで内容を公開しており、やはり幕末時代を長く描くようです。これは私の渋沢観ともピッタリ一致します。栄一の出自は豪農であり、農民と商人と職人と武士を足して四で割ったような生家でした。ここを丁寧に描いていただけると、彼にとっての人生の原風景がどのようなものであったのか、よく分かります。冒頭の紹介が徳川家康によるものだったことも、渋沢が江戸時代の人であったことを印象づけていました。
ドラマでは徳川慶喜と栄一が初めて出会った所から入りました。慶喜に頭を下げて敬意を払いつつ、しかし言うべきをハッキリ言う姿を吉沢亮さんが迫真の演技で見せてくださいました。私に言わせれば、この態度こそ、栄一のすべてと言っても過言ではありません。よくぞこのシーンを最初にもってきてくださいました、と感謝しております。
また尾高千代と栄一が、いとこ同士の関係から、やがて恋愛と結婚に発展していく様子も期待が持てます。「幕末に恋愛結婚なんてないだろう」なんて野暮なことを言う人がいるかもしれませんが、この二人については栄一の実子である渋沢秀雄が「二人の間に恋愛感情が生れていたかもしれない」と述べていました(『父 渋沢栄一』)。ここをNHKさんが見落とすはずはないでしょう。
おしゃべりな少年時代を子役の小林優仁さんが好演しています。自他ともに認める「おしゃべり」で通っていた栄一は、なるほどこんな少年だったのでしょう。徳川斉昭を竹中直人さんに演じてもらおうと考えたのは、一体どこの誰なのでしょうか。これ以上ないハマり役です。
経営学の大家・ピータードラッカーは、栄一を評して「世界のだれよりも早く、経営の本質は『責任』にほかならないということを見抜いていた」と述べました。父・市郎右衛門が、ドラマの中で「責任」を強調していたことは、この前振りでしょう。
ドラマに合わせ、私が主担当で渋沢栄一著/PHP理念経営研究センター編訳『渋沢栄一一日一訓』を発刊いたしました。この書に記載されている渋沢の言葉とドラマの内容は、シンクロしていきそうで楽しみです。今後も、ドラマとこの書を同時に楽しんでいただけるように投稿してまいります。
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