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執筆者の写真坂本 慎一

『青天を衝け』第7回

今回は渋沢栄一が長野へ行き、山に登って「青天を衝け」という題名の元になった漢詩をつくりました。登山によって吹っ切れた様子であり、今後の展開が楽しみです。漢詩も改めて紹介され、それは良かったのですが、残念ながら、やっぱりNHKさんの誤訳ですね。

>【タイトル「青天を衝け」について】

>若き栄一が、藍玉を売るため信州に旅したとき、険しい内山峡で詠んだ漢詩の一節から

>とりました。

>「勢衝青天攘臂躋 気穿白雲唾手征」

>(青空をつきさす勢いで肘をまくって登り、白雲をつきぬける気力で手に唾して進む)

>逆境に負けることなく突き進んだ栄一の人生とも重なります。

直前の「渉攀するとますます深険にして、いよいよ酷となる。奇巌怪石、磊々として横たわる」を踏まえ、正しい訳はこうです。

「青天をつく勢いの岩山を、腕まくりして登る。山のモヤは白雲に達するほどであり、手にツバをつけて行く」

渋沢栄一は生涯に283の漢詩を残しています。漢詩は、プロではない人がつくると、似たような表現が多くなります。以下、渋沢敬三編『青淵詩歌集』(角川書店、1963年)から、似たような表現を引用します。

突天巌勢又疑飛 (天を突く巌の勢い また飛ぶかと疑う)(21ページ)

攀霞崖路背負剣 (霞を攀じて崖路、背に剣を負う)(24ページ)

攀巌又廻谷入雲烟 (巌を攀じ、また谷を廻りて雲烟に入る)(25ページ)

霜晨穿霧鬢如銀 (霜晨、霧を穿ちて、鬢、銀のごとし)(34ページ)

山勢迤邐水競流 (山の勢い、迤邐として、水、競い流れる)(51ページ)

栄一は山の漢詩を他にもつくっており、「天を突く巌の勢い」とか、「山の勢い」などの表現が好きでした。だから「青天を衝く」は栄一の勢いではなく、岩山の勢い(高さ)であり、「気」も栄一の気力ではなくで、山のモヤとか霞のことです。

ドラマの内容は架空でよいと思いますが、ドラマの題名が漢詩の読み間違いとは!!

NHKさんに報告しておきます。

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