まず、先週「青天を衝け」という題名は誤訳ではないかと、NHKさんに問い合わせをした件をご報告します。その後、NHKさんから大変丁寧なお返事をいただいており、感激しています。題名の元になった漢詩について、渋沢栄一本人が詳しい解説をしていないので、決定的な意味は不明というスタンスだそうです。今回のドラマの題は吉岡重三氏というかつて埼玉県深谷市にいた郷土史家の翻訳を採用したとのこと。NHKさんにはお礼のお返事を送っておきました。
さて、ドラマではいよいよ安政の大獄が始まりました。後年、渋沢栄一は井伊大老について、とにかく人の意見を聞かない人だったので、長生きしなかったと言っています。ドラマでは岸谷五朗さん演じる井伊直弼は、気が小さくて暴走する、極めて分かりやすい悪役です。直弼の地元、彦根のゆるキャラの「ひこにゃん」も、岸谷さんの名演技にはカブトを脱ぎそうです。
安政の大獄で、小池徹平さん演じる橋本左内は、おそらく来週には死刑になってしまいます。左内は最期、泣きじゃくりながら死刑になったとも、超然として刑場に赴いたとも伝えられ、歴史家でも「どっちやねん」と突っ込みたくなります。ドラマではどちらの説を取るのか見所です。
ドラマの徳川慶喜のパートは何に基づいて描かれているのか、ずっと考えながら見てきました。やっぱり渋沢栄一著『徳川慶喜公伝』のようですね。幕末の目まぐるしい情勢に翻弄される姿を草彅剛さんが好演されており、後年の栄一が回顧する慶喜そのものです。
私が大学院生だったとき、「『徳川慶喜公伝』は慶喜の臣下であった栄一が編纂させたものであるから、内容が偏っていて資料としては使えない!」と力説する先生がおられました。この先生はご健在ですが、あまり人の話を聞くタイプではないので、長生きされますでしょうか。
ドラマの最後では、栄一と千代が結婚しました。このあと栄一は家を飛び出してしまい、奥さんには苦労をかけっぱなしです。残念ながら、実際の千代は40歳で亡くなります。夫の言うことをよく聞いて、献身的すぎる妻も長生きしないようです。そう考えると私の妻は200歳まで生きそうで安心しております。
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